安珍と清姫の物語は、能楽や歌舞伎の題材となり、「道成寺物」と呼ばれる演目を生みました。その数は優に100を超えます。
道成寺物の原点が能楽『鐘巻』、『道成寺』です。お能の最重要曲の一つであり、若手能楽師にとっての登竜門でもあります。
道成寺物の中で、最も人気の高いのが『京鹿子娘道成寺』でしょう。他にも『二人道成寺』、『奴道成寺』、『傾城道成寺』などがあります。
能楽『道成寺』や歌舞伎『京鹿子娘道成寺』が安珍清姫伝説の後日談として作られたのに対し文楽の『日高川入相花王』(ひだかがわいりあいざくら)は、清姫本人も登場する、よりオリジナルに近い作品です。通し狂言の大作で、今では「日高川渡し場の段」が好んで上演されます。
道成寺物は、古典舞踊に限らず、美術、文学、現代芸術など、ほぼ全ての芸術分野に取り入れられており、毎年のように新作が生まれ続けています。

安珍清姫伝説は、昭和35年に『安珍と清姫』(市川雷蔵・若尾文子主演)で映画化され、今年再び、『娘道成寺〜蛇炎の恋』(中村福助・牧瀬里穂主演)で映画化されました。 |
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