About 四、鐘楼の位置 入相桜(いりあいざくら) 道成寺では、昭和50年代に境内の発掘調査が行われ、法隆寺を左右逆にした伽藍配置であったことがわかりました。とすれば、法隆寺に今も残る鐘楼の位置を、左右逆にして道成寺にあてはめると、道成寺の初代鐘楼の場所が推定できることになります。そうして割り出された場所には、入相桜(いりあいざくら)という桜の植え込みがありました。この桜は、江戸時代の「紀伊国名所図絵」にも出てくる大木で、三十三本の支柱で支えられ、六間(約10メートル)離れた本堂の縁側まで枝が届き、縁側から桜を和歌に詠んで、短冊を枝につるせた、と記されています。安珍清姫伝説にちなむ文楽が作られた時、この桜にちなんで「日高川入相花王」(ひだかがわいりあいざくら)と名付けられるほど、江戸時代には有名な大木でした。古今和歌集に能因法師の和歌があります。 山里の 春の夕暮れ 来て見れば 入相の鐘に 花ぞ散りける お寺の鐘は、日の出と日没のころに六つずつ打つことが多いようです。このうち夕方の鐘は、日の入り合い時に打たれるので「入相の鐘」(いりあいのかね)と呼ばれます。 道成寺では、いつの時代か釣鐘がなくなり、鐘楼の跡を踏み荒らさないように桜が一本植えられたのではないでしょうか。夕方になり、「ああ、本当なら入相の鐘を打たねばならないのに」と思いながら見上げるうちに、その桜はいつしか入相桜とよばれるようになったのではないでしょうか。 事件の現場? 入相桜は和歌山県の天然記念物に指定されていましたが、大正年間に台風で幹が折れ、指定は解除されました。幹は折れたものの、根本から別の芽が出て、今では再び大木の桜となって枝を広げています。この植え込みは発掘調査されませんでしたが、その周囲からは、何と焼けた土が見つかりました。道成寺の初代鐘楼で、やはり平安人を驚かすような放火無理心中があったのでしょうか?それとも、単なるたき火の跡? 石段の不思議 仁王門の不思議 三重塔の不思議 鐘楼の不思議 御開帳と秘仏 娘道成寺の人気 無き鐘ひびく道成寺 資料ダウンロード 七不思議について詳しくはこちら 七不思議パンフレット(PDF)