About 三、三重塔の不思議 切られた御神木 道成寺の三重の塔は、元禄十三年(1763)に再建されました。未調査ですが、基壇の下に奈良時代の三重塔の遺構が残っていると推定されています。現在の塔が道成寺にとって何代目の塔になるか不明です。たまに台風が上陸する土地柄ですし、戦国時代には「塔は無く、礎石ばかりなり」と記されています。やがて、江戸時代に入って世情も安定し、本堂、仁王門と修理が進み、いよいよ三重塔が再建されることになりましたが、心柱に使える良材が見つからなかったようです。あちこち探すと、道成寺から20キロほど離れた所に妙見神社(みょうけんじんじゃ)があり、その御神木のヒノキなら使えそうだ、ということになりました。時の住職は覚悟を決め、妙見神社に行き、神社を守っている山中源右衛門さんという人に頼みました。「この生きている御神木を切らせて下さい。道成寺の三重塔の再建に使います。」と。源右衛門さんは、ひとこと「差し上ぐべく候」と仰ってくれました。御神木は切り倒され、運べないので更に半分に切られ、道成寺へ運ばれ、三重塔が再建されました。 木は、材木になると、生きている年数以上の寿命を得るそうです。樹齢100年の木なら柱や梁として100年以上、法隆寺三重塔のように1400年近くたっている塔には、樹齢1400年クラスの木が使われているのでしょう。道成寺の三重の塔の心柱の長さは約20m。ヒノキの白木の部分を取り去り、茶色い芯だけを使っていますので、相当太いヒノキであったことが分かります。 御神木と、妙見神社の方々には、お礼の言いようもありません。三重塔を末永く護り、切られた御神木に2倍、3倍の寿命を得ていただくしかないのでしょう。道成寺にとっては、塔を再建できただけでなく、「御神木を懐に抱く塔」になったわけです。 文字通り、神様と仏様のお導きを示す塔となりました。 ノミで死んだ棟梁 この塔には特徴があり、一、二階の屋根は平行垂木(へいこうだるき)で、三階は扇垂木(おうぎだるき)で支えられています。平行垂木は一般的な工法で、扇垂木は美しい反面、一本一本の垂木の形が違う、複雑な工法です。 これについて、不思議な民話が残っています。 三重塔を再建していた棟梁さんが、二階まで組み上げて、下に降りて休憩していたそうです。すると、一人の巡礼が通りかかり、話しかけました。「棟梁や、扇垂木って知ってるか?もっと美しい塔にできる方法があるぞ」棟梁は、巡礼の言う通りに三階を扇垂木にしてみると、見映えが一層良くなりました。「ああ、一階も二階も扇垂木こうしとけば良かった。わしも素人に教わるようでは…」と後悔して、完成後に、三階から鋭いノミを口にくわえて飛び降り自殺をしてしいました。 いくつかの本にも載っている民話で、話としては面白いのですが、そんな事実はありません。おそらく、晩酌が過ぎて「飲み」で命を落としたのでしょう。 石段の不思議 仁王門の不思議 三重塔の不思議 鐘楼の不思議 御開帳と秘仏 娘道成寺の人気 無き鐘ひびく道成寺 資料ダウンロード 七不思議について詳しくはこちら 七不思議パンフレット(PDF)